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その年は久しぶりに、福井県で仕事があった。
大阪から金沢へ向かう電車に乗った。
混んでいる車内で空いている座席を探すと、知らないおばちゃんの隣の席が空いている。
おばちゃんは座らせたくないのか、自分の荷物をその空席いっぱいに広げていた。
わたしはそのおばちゃんに問いかけた。
「すみません、ここいいですか?」
ちょっと嫌な顔をしながら、しぶしぶ荷物をどけてくれた。
会釈して座席に着く。
しばらくして、おばちゃんがおもむろにテーブルを出した。
何をするのか横目で見ていると、なにやら並べ始める。
—— ん? なんだ? あっ、くさっ!
おばちゃんは納豆を出し、まぜまぜしながら豪快にお弁当の上に載せ、食べ始めた!

—— マ、マジ? 電車の中、臭いんだけど!

おかまいなしに食べ切り、弁当箱を片付ける。
においはそこら中に広まっていた。
迷惑そうに人が振り返る。わたしは隣でどんな顔していいのか悩む。

すると、今度はガサゴソと化粧品をテーブルに並べ始めた!

—— コギャルか?

おばちゃんは念入りに化粧を済ませ、満足そうに鏡をのぞき込む。
ここまでくるとあきれて、何も声が出ない。
そのまま見ていると今度は新聞紙をバーンとわたしの前で広げた!

—— やるなっ、このおばちゃん……。
真剣に読んでいるので、わたしもあきれ過ぎてかまいたくない。
わたしは少し眠ろうかと目を閉じた。
「チョットねえさん、どこまで行きはるの?」
隣のおばちゃん、突っ込み手のひらで、わたしは胸を叩かれた!
「いたっ!」
わたしのことなどおかまいなしに、わけのわからん話を機関銃のようにするおばちゃん。

関西弁がよくわからないけれど、たぶんこんなことを言っていたと思う。
「わたしは金沢に嫁に行ったけど、元々は関西出身で金沢の人にはなじめない。土地柄が違うというか、なんというか、とにかくイジメに遭っている。これから娘の所にいくのだけれど、行けば行くだけお金をせびられ、たまったもんじゃない。物価は高いし、年金暮らしは大変だ。かと言って仕事もこの年ではもうないし。どうしたらいいんだろう。孫にもお金がかかるし、暖房費は高いし、野菜は高いし、年寄りは死ねってことなんだろうか?」
こんなようなことを1人でベラベラと話していた。
機関銃のように話されてここまで理解できたほうが奇跡だ!
ほとんど霊感で理解していたのかもしれない(笑)

「ところで、ねえさん、どこで降りはるの?」
「福井です」

おばちゃんは返答もせず、また同じような話を繰り返した。
話し疲れたのか最後には「ホンマ、かなわんわぁ~」と、ぽつりと言った。
—— わたしがホンマかなわんわぁ~ですわ!
なんといっても、座席の前のネットに入れた容器から納豆のにおいがすごい!

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