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なかなか仕事が見つからず、とりあえずはバイトでもしようと思いさがしていたころのことだった。
出掛けてから、お昼になってとりあえず周辺でランチでもしようと、よさげの店に入った。
そこは居酒屋で、ランチのためだけに日中も開店しており、入るのは初めてだった。

雰囲気がなかなかいいお店に癒される。
和食が中心で、従業員の制服もかわいいデザインだった。
ランチを食べながら、店の雰囲気を味わっていた。とても忙しそうな従業員を見て、ふと人手が足りない気がした。
—— これは、忙しそうだからいけるかも?
私はそう思い、ランチ終了ギリギリまで待って、従業員に話しかけた。
「あの、ここで働きたいのですが募集してますか?」
なんの根拠もないのに、突然、客からこんな話が出るとは思っておらず、従業員は慌てていた。
「少しお待ちください」
そう言い残し、個室を出ていった従業員に代わって、店長さんらしき人が現れた。
「ここで働きたいと聞きました。では履歴書を後日、持ってきてください」
私はすかさず履歴書を出す。
「あ、お持ちなんですね……」
店長は驚きながらも、そのまま面接をしてくれた。

そして、私の読みどおり人手が足りず、その場で採用となった。

翌日よりバイトが始まる。
研修があると思っていたのだが、軽く説明されただけで、すぐに接客に入った。
調理する人が1人、調理補助が1人、店長、そしてホールは私を入れて2人だった。
満席になれば、まったく人手が足りない。しかも私は初日で、まだメニューも覚えておらず不安だけがよぎる。
入口では店長が席案内と会計をし、私ともう1人の女性だけでホールを回す。
もう、なにがなんだかわからないなかで、どうにかやりこなす。
忙しさがピークを迎えたとき、もう1人の女性の姿が見当たらない。
—— どこいったんだろ? こんなに忙しいのに……。
探しに行くと、その人は皿を洗っていた。
「あの、注文のお客さん待ってますけど……」私は急いでいることを告げた。
「あ、あんたがやって!」
「え、ひとりでは無理です!」
「どうせ回らないんだから待たせておけばいいよ!」
驚きのあまり、何も言えず私は接客に戻る。あちこちで苦情を言われ、ただただ謝るばかり。
気づくと店長の姿が見えない。
「店長呼べ!」という客の文句に、私が謝るしかなかった。
「お姉さん大変ね、こちらはゆっくりでいいから……」と言ってくれる客もいた。
どうにか、ひとりでこの状況を乗り切り、ランチタイムは終了した。
もうクタクタで座り込んでいると、のん気に店長が戻ってきた。
「お疲れ~」
「どこいってたんですか!」
「昼飯だよ」
使われていない宴会席でみんながご飯を食べていた。
「あ、あんた、食べたら上がっていいから!」
あきれて、何も言えない。
私は宴会席で、残っているまかないを食べながら、ほかのスタッフに聞いた。
「あの、ランチっていつもこんな感じなんですか?」
「いや、いつもはホール5人だから楽だよ」
「じゃ、明日はもう少し楽ですね」
「それは無理! みんな辞めちゃったから!」
—— え~、まじ? こんなの私も絶対無理!
帰り際、店長に呼び止められた。「明日もよろしく!」
私は間髪入れず答えた。「無理です。もう、できません!」
「やっぱりな、俺も今日で辞めるんだ!」
そう言って、笑った。
―― だからみんな、いいかげんだったんだ……。
あきれすぎて私は、この日一日でバイトを辞めたのである。

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