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ある日、フランス料理店の募集を見つけた。
そこは家からも近いし、時給もなかなか良かったのですぐに私は面接へと向かう。
夜がメインのフランス料理店には、昼間はだれもおらず、オーナーがひとりで仕込みをしていた。
「あ、あの……、募集を見て来たんですが……」
ちょっと不愛想なオーナー兼シェフは私を上から目線で見回す。
店内で簡単な面接を受け、すぐ明日来るように言われた。
あまりにも簡単な面接。
しかも即採用には驚いたものの、少しシャレたお店で働けるのは私の心を躍らせた。

次の日、初出勤。
小さいお店だからか従業員は私ともうひとりの女性しかいなかった。
その人からいろいろと教わる。その人はいっぺんに急かすように早口で次々と私に指示してきた。
ちょっとパニックになりつつもメモを取りながら必死で覚える。
フランス料理だけにフランス語のメニューに悪戦苦闘。
休憩もそこそこに次々と教え込まれた。
ぐったりしている私を見て彼女は言った。
「いっぺんに言われても困るわよね。少しずつ教えたいところだけど、私今日で辞めるので……」
「えっ、辞めちゃうんですか?」
彼女はなぜ辞めるのかは言わず、引き続きいろいろと私に指導した。
不安が募る。明日から私ひとりかと思うと憂鬱になった。
その日は結局引き継ぎだけで終わる。今思うとその日は夜になってもひとりもお客は来なかった。

(つづく)

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