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フランス料理店(1)」のつづき

二日目。
「おはようございます!」
私は元気よく挨拶をオーナーと交わした。
いや、交わしたつもりだった。オーナーはムスッと私の前を横切っていった。
「あ、あの、私、何をしたらいいでしょうか?」
「掃除機かけて!」
今日から私ひとりだ。私は張り切って掃除機をかける。
ゴロゴロ、ゴゴゴゴゴゴッ……。
「ちょ、ちょっと、あんた! 何してんだよ!!」
「えっ? 掃除機かけてますけど……」
「ゴロゴロ掃除機引きずって、床に傷がつくだろ!」
「気をつけます……」
決して乱暴に引きずっていたわけではない。むしろ優しく引きずっていたのに怒られた。
細心の注意を払って再びかけなおす。
「お、おい! 引きずるな!」
「そんなに引きずってません!」
「掃除機、背負ってかけるんだよ!」
「えっ!」
よく見ると、掃除機に背負う紐がついていた。
―― これ、背負ってかけるの?
しかたなく背負って掃除機をかける。
ゴゴゴゴッ……ゴゴゴゴッ……。
ふと、ウィンドーのガラスに映る私の姿を見て唖然とした。

—— これ、ゴーストバスターじゃん!

おもしろいやら、情けないやらの気持ちを振り切り仕事を続ける。
前日に教えてもらった通りのテーブルセッティングを終え、次の仕事にとりかかろうとしていたら、オーナーに言われた。
「しばらく、なにもしなくていいよ」
―― 何もしなくていいの?
そのまま、しばらくという期間が閉店まで続き、お客様はひとりも来なかった。

(つづく)

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