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母から聞いた、私が幼児のころの話を思い出した。

当時の母は和裁の仕事をしていて、毎日とても忙しくしていた。
針やハサミといった危険な物が身近にあったため、幼い私は柱に紐で縛り付けられ、歩き回らないようにされていた。仕事と家事と子育てに追われる毎日の母は疲れきっていた。

ある日、いつものように危ない所へ近づかないようにと柱に私をくくりつけて仕事を始めると、いつもなら泣きわめいて騒ぐはずの私が、なぜかおとなしい。
母は気になりつつも、仕事がはかどるのでそのままにしていた。

集中して仕事ができたおかげで、思った以上に早く仕事を終え、私を見ると……、スヤスヤとおとなしく寝ている。
――よかった! おとなしくしてくれると助かる。

母は安堵の気持ちで私へと近づくと!
「えっ! ええええええええ!!!」
私はガラス瓶入りマジックインキ(油性マーカー、フェルトペン)をくわえ、意識を失っていた!
母は慌てて、とっさに目の前にあったミルクを飲ませる! ミルクを飲ませながら、頬を叩く。
「起きて!! 起きて!!」
私の意識は戻らない。私を抱きかかえ急いで病院へ駆けこむ。病院で処置をされるがなかなか意識が戻らない。
やっとのことで、意識を取り戻した私は入院になることもなく家へと戻れたらしい。

母は申し訳なさそうにするのでもなく、こんな話を小学生だった私に聞かせて、なにが言いたいのかよくわからなかったが、今になって考えると、
「こういう時はミルク(牛乳)飲ませるといいんだって! 先生に褒められたんだよね」
と何度も言っていたので、自慢をしたかっただけかもしれない。

マジックインキで気を失ったことは、まったく私の記憶にはないのだが、この時すでに私はあの世を覗いてきたのかもしれない。

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