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新潟ラブストーリー(2)のつづき

そんなある日、もう夫とはダメだと判断し、札幌に帰る決意をした。

それを彼に打ち明けると、彼はとても寂しそうな顔をして言った。
「新潟のイメージが悪いままじゃ寂しいので、今からなんちゃって恋人でいい思い出を作ろうか」
彼のやさしい言葉がうれしかった。

それからわたしたちは疑似恋愛をした。
時間が許す限りいろいろな所へデートに出掛けた。

恋人岬。
恋人たちがそこに訪れ、お互いの名前をカギに書いて約束するロマンチックな場所。
わたしたちは疑似恋愛なので、カギに名前を書くことはしなかった。
見渡しのいい海岸沿いのテトラポットが夕日に照らされて、とてもきれいだった。
ドライブには最高のシチュエーション、海沿いの小さな、小さな食堂。
地元では有名な定食屋。ラーメンがすごくおいしかった。

菜の花畑。
一面に黄色の菜の花畑で初めて見た光景に感激した。
のどかな光景と童謡が鳴る中で幼い頃を思い出し無邪気に遊んでみた。

コスモスが咲く丘。
小高い山の上に一面に咲くコスモス。
だれもいない花畑は貸し切り状態で最高だった。
都会では見ることができない光景に酔いしれ、しばし時を忘れて楽しんだ。

そして、あの夏の花火。
花火が有名な所なので毎年楽しみにしていた花火。各地からたくさんの人が訪れる花火大会。

わたしたちは一緒に行きたかったけれど、さすがに人目があるので無理と判断。
花火大会当日は夫と行く予定だったのだが、なぜかまたその日も実家へと一人で行ってしまった。
わたしはしかたなく出掛けないでおこうと決めて落ち込む。
―― 今年は家で花火の音だけ聞いてるか……。

花火大会1時間前、彼からメールが来た。
「何してる?」
「家にいる」
「ご主人は?」
「実家に出掛けた」
「とりあえず、急いで会場近くまでおいで」
そう言われ、わたしは急いで約束の場所まで行った。

そこには彼が待っていた。
彼はわたしの手を引っ張り走り出す。
「ど、どこいくの?」
もう始まってる花火大会の暗がりの中。
人と人の間をくぐり抜けて彼は急いでどこかへ向かってる様子。
少し息を切らせながら彼は小さな小高い土手にわたしを連れてきた。
「ここ、特等席!」
そこから見える花火はとてもきれいで思わず花火に見入ってしまった。
花火に見とれて気付くと彼は横にいなかった。

「あ、あれ?」
—— あっ、そかっ。そだよね。地元人だからだれに見られてるか分からないよね。

いきなりメールが来た!
—— えっ? だれ?
メールの内容は「花火きれいだね。大好きだよ」振り向くと後ろに彼がいた。
なんだか、うれしくて切なくて泣けてきた。
目の中に入り切らないくらい大きな花火を見ながら泣いた。

新潟での辛い日々が消えていく。上から降ってくる花火がまぶしい。
わたしたちは花火が終わる前に人込みの中を帰る。
だれにも見られないように……。少しずつ距離をおいて……。
「ありがとう」と声に出せない声で彼に伝える。

彼は軽くうなずいて帰っていった。

(つづく)

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