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懐かしい店の前を通った時、ふと、母の思い出がよみがえった。

このお店、昔からある老舗のおだんごやさん。
昔は実家の近所にあり、そこでお団子を食べることができたので母とよく行っていた。
お茶をサービスされ、お団子をつまみ、ひと休みしては母と帰る。
母は自分たちだけ食べるのが悪いと思ったのか、いつも帰るときは家族分のお団子をお土産にしていた。

家に戻り、みんなでお団子を食べるかと思いきや、他の家族はあまり興味がない様子。
「せっかく、買ってきたのに!」と、母がさっき食べたばかりなのにお土産を食べ始める。
「あんたも食べなさい!」と言われたが、さすがにお腹がいっぱいだ。
食べない私にもイラついたからなのか母は意地になって食べていた。

「あっ、あれ?」と母が食べながら、口から何かを出した。
「なに、これ?」
よく見ると、木のこっぱのようなものだ。団子の櫛にしては大きすぎる。
「これって、店に言ったほうがいいんじゃない?」
母はイラついていたのもあり、すぐにそれを持って店へと向かう準備を始める。
「あんたも一緒に来なさい」
なぜか私も巻きこまれる……。

店に入るなり、母はちょっと怒り気味で言った。
「あの! これ、入ってたけど!」
ふくよかな団子屋のおばちゃんは、のんびりとそれを見つめる。
「あ、これね~」
「これね~、じゃないでしょ!」母はさらに機嫌が悪くなる。
おばちゃんはきょとん顔をしたかと思ったら、大笑いしだした!
「だって、これ、木べらのかけらですよ! ラッキーじゃないですか!」
「ラッキー?」
「なかなかこんなことないんですよ、良かったですね」
—— ん? 良かったのか?
おばちゃんは、笑いながら何やら団子を数本包む。
「はい、これ。ラッキーなので差し上げます」
「そうですか……」
母は何が良かったのかわからないが機嫌が直り、にこやかになる。
—— え、これでいいの? 問題解決してない気がするけど……。
なんだかおばちゃんに騙された気分だったのだが、母はすっかり気分が良くなり店を出た。

家に戻り、家族にその話を自慢げにしている母。
家族はまったく誰も聞いていない。
自慢げに話しながら団子を再び食べる母はすっかり上機嫌で団子を食べ尽くす。

—— これでいいの? なんか……、どうなのよ。てか、お母さん! 食べ過ぎです!

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