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早いもので、父が亡くなり今年で10年がたった。
この時期になると生前の父を思い出す。

あれは、年末のことだった。
父がひとり、自分の部屋でテレビを見ていた。
何の番組かはわからないのだがアナウンサーの声が聞こえた。
「はい、もうそろそろ今年も終わりますが、みなさんはもう年賀状をお書きになりましたか?」
「いや、俺はまだ書いてない。今年は忙しいからこれからだなっ」
—— え? テレビと話してる!
「年越しのご用意はお済みですか?」
「いや、これから買い物だなっ」
マジでテレビと会話する父にマジ、ドン引きで声すらかけることができなかった。
普段は無口でほとんど話をしなかった父。
テレビとこんなに話していたことに驚いた。

そういえば、こんなこともあった。
年末紅白歌合戦が始まると毎年決まって台所から物音がしてくる。
ある年のこと、何の騒ぎかと台所をのぞくと、父がジューサーで山ブドウを絞っていた。
「何してるの?」
「……」
返事もせずに山ブドウを絞る父。
あとからわかったのだが、どうやらぶどう酒を作っていたらしい。

また違う年には、何やら大きなボールでこねている。
「何作ってるの?」
「……」
これまた返事もせずに淡々とこねる父。
あとからわかつたことだが、年越しそばを作っていたらしい。
初めて作った年越しそばは、長さ5センチと短く、味もまずいものだった。

年末になると必ずといっていいほど紅白歌合戦の時に台所で何かやらかす父。
—— もしかかしたらかまってほしかったのかな? そうなの?
と聞いてみるも、あの世の父は生前と同じくやっぱり無口だった(笑)

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